社葬の位置づけ

〇社葬(団体葬)とは

「社葬」「団体葬」とは規模の概念ではなく、運営の責任を負うのが企業(団体)であればそれが「社葬(団体葬)」です。たとえ小規模の葬儀であっても企業が葬儀費用を負担して行う場合は社葬となります。つまり、「個人葬」と「社葬」の区別は、費用負担および運営の主体が個人(遺族)であれば個人葬で、それが会社(団体)であれば社葬(団体葬)となります。社葬には大型の葬儀が多く、準備期間が必要ですから、死亡直後には遺族中心の個人葬を営み、2~4週間後に改めて社葬を行うことがあります。この場合、亡くなった直後の葬儀の費用を企業が負担し、実質は社葬でありながら、名目上は遺族が出す個人葬とすることもあります。また、中小企業のオーナーが亡くなった場合には、費用を遺族が負担し、運営は企業が責任をもつ「社葬」が行われることがあります。これは、葬儀費用が相続財産から控除されるので、費用は会社ではなく遺族が負担するほうが有利という判断から行われるもので、こういった名目的な社葬もあります。

2000年代になって特に増えてきたのが「合同葬」と「お別れ会」方式の社葬です。一般に「合同葬」方式は死亡後1週間程度以内に個人葬と社葬とが合同で行われ、「お別れ会」方式は個人葬を済ませた後に別個に行われる傾向にあります。企業(団体)が運営および費用の負担を行うのであれば、名称は変化しても社葬(団体葬)です。

〇「喪主」と「施主」

「喪主」は祭祀を執り行う者、または祭祀権の承継者のことで、遺族の代表者をさします。これに対し「施主」は「布施する主」を意味した言葉で、葬儀費用を負担し、葬儀を運営する責任者のことです。

社葬では企業が費用を負担し、運営の責任をもつのですから、施主は企業ということになります。個人葬の場合には一般的に喪主=施主ですが、社葬の場合には異なります。

〇「密葬」と「本葬」

本来「密葬」は近親者だけで葬儀を行い、広く告知や案内を行わない葬儀のことです。ですから、密葬には葬儀式はあっても告別式はありません。

社会的影響力のある人が亡くなった場合には準備や告知の必要から、死亡直後には近親者だけで密葬を行い、後日に告知や案内をして葬儀を行うことがありますが、この葬儀を「本葬」と言います。しかし、実際には「密葬」と言いながらも告知することがあり、この場合に「密葬」と呼ぶことは本来の意味からは適当ではありません。「個人葬」~「社葬(団体葬)」としたほうが誤解が少ないように思います。

〇「合同葬」とは

葬儀費用および運営の負担が複数の企業または団体によって行われる葬儀が「合同葬」です。例えば故人が○○会社の社長であり、かつ△△協会の会長であったとします。○○会社と△△協会が共に葬儀費用と運営の負担をして行う葬儀は「合同葬」になり、「○○会社と△△協会の合同葬」と呼びます。

近年特に増えてきた形式に遺族と会社の合同葬があります。「合同葬」は遺族(個人)のなす葬儀と企業(団体)が行う葬儀とを一緒に行うケースです。この場合、その費用と運営の責任が企業(団体)にあれば実質は社葬(団体葬)ということができます。「○○家、○○会社合同葬」と表示されます。

〇葬儀全体の中での社葬の位置づけ

死亡直後の個人葬(密葬)と区別して本葬として行う社葬(または最近流行の「お別れ会」)

は、まさに会社の行事として行うもので、「社会的な死の確認儀礼(告別式)」を独立させたものと理解することができます。僧侶による引導などの宗教儀礼はすでに個人葬における葬儀式でなされているのが普通ですから、本来は社葬全体が告別式であると考えるのが合理的です。こうした意味からいえば社葬を「お別れ会」という名称で行うのはおかしいことではありません。(「お別れ会」は社葬に限った概念ではなく、葬儀式と告別式を別個運営する場合のことです。無宗教というよりは宗教儀礼を伴わない形態の告別機能に重点を置いたものと言うことができます。)

〇社葬(団体葬)の一般的な進行

※個人葬がすでに営まれていることを前提にします。

❶遺骨の出迎え

遺族が式場に遺骨を抱いて入場するのを社員が出迎えます。

❷参列者入場

参列者を式場に案内します。

❸式典

一般に「葬儀式」と呼ばれるものです。法要や式典が行われます。

❹告別式

一般会葬者による焼香(献花)が行われます。

❺社員への挨拶

運営を手伝ってくれた社員へ葬儀委員長や遺族代表から挨拶が行われます。

❻遺骨退場

遺族に抱かれた遺骨が式場から退出するのを社員で見送ります。

〇「お別れ会」方式

1.宗教儀礼を伴わない。

2.形式ばらない自由な運営。

3.故人との別れ、遺族の悲しみへの共感を主体とする。

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グリーフワーク

〇グリーフワークとは

「グリーフワーク」は葬儀の機能として近年注目されているものです。愛する家族の一員を喪った家族は、悲しみに襲われます。これは特別なことでも病気でもなく、自然なことです。この悲しみは悲しむことにより自然に治癒されていきます。この遺族の悲しみの営みを「グリーフワーク」と呼びます。

グリーフワークは直訳すると「悲しむ作業」です。グリーフは英語で、通常の悲しみとは別の、特に死別などで引き起こされる深い悲しみ、非嘆を表す言葉です。

葬儀は、遺族の心の深い悲しみを思いやり、グリーフワークに役立つものとなることが大切です。このためには死別によって引き起こされる悲しみとはどんなものかを知る必要があります。

〇死別の非嘆の様々な局面

亡くなる人と深い愛情関係に結ばれていた家族、あるいは、突然の死に出会った家族が、死と対面してたどる心理的プロセスは次のように理解されます。

※以下は、E・キューブラー・ロス『死ぬ瞬間』により、死を告知された末期患者の心理プロセスの骨格を参考にしながら、野田正彰『喪の途上にて』、A・デーケン『死とどう向き合うか』などを参照にしてまとめたものです。

〔第1段階  衝撃〕

ショックを受けて取り乱す人、あるいは、ショックによって現実感覚が一時麻痺状態に陥る人がいます。表面的には平静ですが、内面ではショックを受けており、平静状態と呆然状態が交互に現れる例もあります。

〔第2段階  否認〕

死亡の事実そのものを認めず、きっとどこかに生きていると思いこんでいたり、あるいは、死亡の事実は一応客観的に認識してはいたりするものの、主観的にはまだ生きているという思いが行き来している状態です。

〔第3段階  パニックや怒り〕

自分が制御できなくなりパニック状態に陥ったり、あるいは理不尽で不当な運命に対して激しい怒りが生じたりします。この怒りを制御したり、内にとどめておくと、怒りは反転して自分に向かい、自己破滅に陥ったり、心身の健康を損なったりする危険性があります。

また、周囲の人々や死者に対して敵意の感情を抱いたり、心身の健康を損なったりする危険性があります。

また、周囲の人々や死者に対して敵意の感情を抱いたり、死者に対する自分の過去の行為を悔い、「あんなことしなければよかった」「ああすればよかった」と罪の意識に苛まれたりすることがあります。

〔第4段階  抑鬱と精神的混乱〕

空想の中で死者がまだ生きていると思い込んで、そのように実生活でも振る舞ったり、孤独感に襲われて人間嫌いになったり、気が沈んで引きこもってしまったりします。また、やる気を失い、何をしていいかわからない状態になることがあります。この抑鬱状態はしばしば長く続きます。

〔第5段階  死別の受容〕

つらい現実をみつめ、死の事実を受け入れようとし、ユーモアや笑いを取り戻すことにより、悲しみから立ち上がる状態です。

もちろん、全ての人がこれらの段階をそのまま辿るとは決まっていません。また、言葉で「悲しみ」と表現しても、死別の悲しみの表れ方は多様です。しかもこれは死別に出会った人が陥る自然な心理状態であって、けっして病気ではないということを理解する必要があります。

人の死とは、愛する人にとって心を揺り動かすほどの大変なできごとなのです。

〇悲嘆の処理に失敗する危険

多くの人は葬儀、四十九日、百ヵ日、一周忌という喪のステージ(段階、場面)を踏むにつれて、悲しみの状態を乗り越えて、日常生活に復帰できる状態になります。かつての喪のステージは、死別した遺族の心情に合致したからこそ受け入れられたシステムだったと言えるかもしれません。

しかし、全ての人がこうした辛い悲しみの過程(=グリーフプロセス)を無事通過できるとは、限りません。悲しみを無理に抑制することにより、心身に異常を来して心身症に陥ったり、いつまでも悲しみの状態にとどまったり、あるいは自己破壊から自殺衝動に走ったりする危険性があります。

その徴候は、悲しみ、怒り、敵意を表現しなかったり、異常な科目状態に陥ったり、重篤な睡眠障害に陥ったり、自尊心が失われたり、罪意識をもつ対象が死者以外のものにまで広がったりすることに現れます。こうした状態に陥った場合、精神科医などの専門家の診療を受ける必要があります。

〇死別の非嘆のケア(グリーフケア)

死別によって強い悲嘆に陥っている人へのケア(=グリーフケア)の仕方にマニュアルはありません。個別状況の違いが大きいのです。そのことを理解したうえで次の原則を頭に入れておく必要があります。

1.「忘れろ」「がんばれ」「しっかりしろ」は避ける

悲しみにある人に、悲しい事実を忘れることを強いるのは一般にマイナスになります。むしろ悲しい事実をみつめることが大切です。また、「がんばれ」「しっかりしろ」は励ましのつもりでしょうが悲しみにある人にはかえって負担が大きいのです。むしろ悲しみの状態を理解してあげることが必要です。

2.話を聞いてあげる

悲しみの中にある人に大切なのは、説教したり、助言したりすることではありません。同じ目線に立って、その人の想いを静かに聞いてあげることです。しかし、無理して話をさせることは逆効果になることもあります。相手が話したいときに、その人の想いを吐き出させ、怒りに対しても遮るのではなく、その怒りを発散させることが必要です。

3.一人にしない

孤独感が強い、周りの人に敵意を抱く、そんな状態のとき大切なことは、気をつけて側にいてあげることです。監視するのではなく、その人の側に静かに寄り添ってあげることが必要です。

4.悲しみを避けない

子どもを交通事故で亡くした親にかわいそうだからと傷ついた子どもに会わせない、あるいは残酷すぎるからと火葬場に行かせない、などというのは周りの配慮から出る行動ですが、時折、これが逆効果になり、遺族の死の現実をなかなか受け入れられない結果になることがあります。本人が望むのであれば遮らず、辛い現実であっても対面させることが大切です。

親を亡くした子どもにも「長い旅に出た」「お星さまになった」と現実をあいまいにして説明するのではなく、子どもが真実を知ることを望むなら「死亡した事実」をきちんと説明すべきです。親を喪った子どもは、死の悲しみを論理的に表現できないことがあります。しかし、感情としては理解しており、不安・悲しみが行動などにさまざまな形で現れ、情緒が不安定になったり、暴力的になったり、落ち着きを失ったりします。注意して見守る必要があり、悲しみを表現させる努力が必要です。

5.自分の悲しみの体験を分かち合う

ケアする人が家族の死に出合った体験をもっているのであれば、自分の体験した悲しみを思い起こし、その気持ちを大切にして相手に接することで、しばしば共感し合うことができます。また、そうした体験のない人も自分の場合のことを想像して、その立場で相手に接するとよいでしょう。

6.事務的煩雑さの負担をかけない

死後の事務的な処理が煩雑で、負担になるようでしたら、周囲の人が代行して、その人の気持ちの負担を軽減してあげることは大切なことです。しかし、もしその人が、それをすることを心から望むならば、代行を申し出ることがあっても、無理やりその仕事から引き離すことはマイナスになることがあります。

7.笑いや休息は不謹慎ではない

悲しみにある人が通夜や葬儀の場で他人の冗談に笑っても、疲れて休息をとっても「不謹慎である」と非難してはなりません。本人が自然に行うことであれば、悲しみというストレスには、笑い、ユーモア、休息は必要なことである、と理解すべきです。

8.健康管理に気をつける

遺族は不眠に陥ったり、しばしば健康を害しやすくなったりします。健康に注意することと、適切な運動が必要となります。

〇グリーフワークの今日的状況

家族分散や核家族化が進み、同じ家族であっても同じ程度の悲しみを体験するとは限りません。ある人々は死を納得し、それほどの悲しみも感じない一方で、少数の特定の家族だけが深い悲しみにおちいることがよくあります。誰が悲しみを抱えているか、よく注意する必要があります。

また、最近は長い介護の末に亡くなる方が増えています。かぞくが医師から早い段階で死の告知を受けている場合、入院中のまだ生きている段階なのに、死別の非嘆が家族を襲うこともあります。

さらに、老人ホーム、老人病院、その他の医療機関に長期入院の末に亡くなったときには、死別の非嘆が家族を襲うのではなく、付き添いの人、看護師など家族以外の人に現れるような事態もあります。そのた、家族よりも親しくしていた友人などに悲嘆現象が生じることもあります。

葬儀の場面においては、家族だけでなく、こうした悲しみを体験している死者と身近な人の心にも配慮する必要があります。

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葬儀の生前準備

〇生前準備とは

葬儀の生前準備のシステムは米国で開始されました。北米では「プレニード」と呼ばれます。葬儀について本人が生前に契約を結んでおくことです。米国では葬儀社の98%がこのシステムを扱っています。日本では1993年秋にリス(LiSS)システムが登場したのが最初です。

生前契約は、次の2段階からなります。

①葬儀の内容を取り決め、

②葬儀の費用の支払い方法を定める

しかし、日本ではその後、契約までは至らない、ゆるい予約を意味するさまざまな生前準備システムが現れ、今日に至っています。

〇生前準備が登場した背景

米国で生前契約(プレニード)が普及した主な理由には、

1.米国は日本と異なり個人社会であり、香典という習慣もなく、葬儀費用は全て遺族の負担となること

2.葬儀によって遺族に経済的負担をかけたくないとする人々が増えたこと

3.葬儀の仕方に自分の意思を生かしたいとする人々が増えたこと

の3つがあげられます。

一方、日本は米国と比較すると共同体社会であると言われてきました。葬儀においても共同体(地域という地縁、企業という社縁、親族という血縁)の力が強く、その運営方法も故人の意思よりはとかく共同体の意思が優先されるものでした。また、費用も「香典」という習慣により賄われる部分が多いのが特徴です。

こうした社会的変化を背景として、米国と同様に「子供に頼れない」「子どもに迷惑をかけたくない」「死後のことにも本人の意思を反映させたい」とする考えをもつ人が、高齢者を中心に増加する傾向にあります。

これらが日本においても生前準備システムが登場し始めた原因と考えられます。

調査によると約3割の人々が生前準備システムに関心があるとされ、実際に契約に至るケースはまだまだ少ないものの、今後のシステムとしてすでにさまざまな生前準備システムが登場しており、注目を集めています。

〇生前予約・契約で注意すること

生前予約・契約は「いつとは定まっていない将来に対する契約」ですので注意することがいくつか存在します。

1.更新についての規定があること

契約内容については、将来において本人の意思が変わることもありますし、料金が変動

する可能性もあります。「5年おきに更新する」などの規定が必要です。また、解約の自

由が保証される必要があります。

2.できるだけ家族の同意を取りつけること

本人の意思だけでは、実際の施行にあたり家族とのトラブルを生じかねません。できるなら約にあたり家族の同意をとりつけることが望ましいところです。

また、家族と意見が対立していても、本人があくまで自らの意思を通すときには、葬儀の生前契約を公正証書にしておく必要もあります。

3.費用の支払いは施行後にすること

契約時に費用の前払いを受けることは望ましくありません。企業の将来は未定ですから将来の保証を安易に行うべきではありません。支払いは将来の施行の終了後に受ける必要があります。

4.支払い原資の確認をすること

契約の対価としては、保険、預貯金、不動産売却などがありますが、保険または預貯金による、目的用途を明らかにした原資の確認が必要です。本人からではなく、家族から支払いを保証する約束を取りつけることも考えられます。

5.契約を明確にすること

特に将来におよぶことである以上、口頭による信頼ではなく、文書による明確な契約が必要です。これは消費者および業者双方にとって必要なことです。もちろん将来保証できないことまでを内容に盛り込むといった責任のない契約はできません。

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葬儀と習俗

〇野辺の送り

墓地または火葬場まで列を組み死者を送ることを「野辺の送り」と言います。

「野辺送り」「葬列」「渡御」とも言います。大正・昭和期に告別式が発生するまでは葬送儀礼の中心となっていました。

野辺の送りにはさまざまな様式がありますが、松明、提灯、六道を先頭にして、旗(銘旗)、龍頭、花籠、香炉、四華、膳、位牌、天蓋、柩などと続きます。葬列での役割は死者との関係によって決定されます。「善(縁)の綱」とは柩につなげた白い布のことで、これを手にするのは近親の女性や子どもが多かったようです。位牌を手にするのは喪主と決まっていました。また死者に供えた枕飯は喪主の妻が持つとされていたところもあります。

江戸時代までは葬儀は夜に行われたことが、松明が先頭に立つことでわかります。村の辻で柩を回したり、帰路は往路と道を変える、埋葬に使用した鍬、草履を捨ててくるなど、死霊が家に戻らないようにと、さまざまな呪法も行われました。

現在では霊柩車の使用もあり、本格的な葬列を見ることはなくなりました。寺院に入場する際に寺門から斎場まで、霊柩車に遺体を納める際に自宅または斎場から霊柩車の位置まで、墓地に納骨する際に寺院から墓地まで、と部分的に葬列を組む習慣を残しているところもあります。また、葬列は組まないものの、葬列の役割を発表する習慣だけを残ししているところもあります。

今、火葬場に向かう霊柩車、マイクロバス、ハイヤー、自家用車の列を「葬列」と称することもあります。

〇湯灌

湯灌とは納棺する前に遺体を洗い清めることです。遺体を洗い清める習俗は世界各地に見られます。古い湯灌の形は、病院での看護師による死後の処置(清拭)の登場によりほとんど姿を消し、現在、都市部で行われている「湯灌」は、巡回老人入浴サービスから転じた業者の新しいサービスです。

古い湯灌は、盥に水を入れておき、それに湯を加えた温水を用いて遺体を洗浄しました。

通常適温にするのにお湯に水を加えますが、これと逆の方法をとるので「逆さ水」と言います。作法としては、新しい杓を用いて遺体の頭から温水をかけるというのもありました。

近世以降は、男性の血縁者が茶碗酒(湯灌酒)をひっかけながら行うとか親族の女性が行うなど、近親者の役割とされてきました。しかし古く中世には、湯灌は聖と呼ばれた宗教者が行ったと言われます。中世末期までは湯灌は授戒や剃髪と一連の作法で、死者の霊魂を浄化するために行ったとされています。湯灌の作業中に、読経または念仏が行われたこともあります。

湯灌には、座棺に納棺しやすいように死後硬直を解くという実用的効果もあったと思われます。

〇魂呼び

「魂呼び」は人が死亡したとおもわれたとき、死者の枕元で、あるいは屋根に登って、または井戸や海に向かって死者の名前うぃ呼ぶ習俗です。「タマヨバイ」「ヨビカエシ」などとも言います。

市花田身体から霊魂が離れることと理解されていましたから、身体から遊離していく霊魂を呼び戻すことによって死者の蘇生を願うと共に、その死を確認し、死者を愛惜する儀礼と考えられます。

〇食い別れ

葬儀においては飲食が重要な意味をもっています。例えば「通夜振る舞い」と言われる通夜の飲食、出棺に際して(最近は、葬儀式に先立っての場合も多い)の「出立ちの膳(ワカレノシ、タチメシ、ナキワカレなどとも言う)」、火葬後の「精進落とし(精進上げ、忌中祓い、お斎など

とも言う)」があります。

飲食は人間の交わりを象徴するものですから、死者と食事を共にすることによって、死者と最後の交わりをし、別れを行ったものと考えられます。したがって、こうした飲食の席では、しばしば死者用にもお膳が用意されます。神と食事をすることで神の力をわが身に取りこむ、神人共食の観念が影響しているとの考えもあります。

今では、死者の供養のための振る舞いや、葬儀を手伝ってくれたり、わざわざ参列してくれた人へのお礼の意味が強調されていますが、以前はそうした意味に加えて死者との食い別れという性格が色濃くあったものと思われます。

また、飲食は、死者の魂を鎮め、死の穢れに対抗し、これを祓う力があると信じられていたようです。柩を担ぐ人、湯灌をする人、納棺をする人、墓穴を掘る人、こうした人々は死穢に強く染まるとかんがえられ、しばしばこうした役割を担う人へはご馳走が振る舞われました。

四十九日の忌明に作る「四十九(日)餅」は、他界に転ずる死者の霊との最後の食い別れとも、忌明を期した清めの意味があるとも言われます。

〇耳塞ぎ、年違え

近隣の者がしんだとき、死者と同年齢である者は死の穢れに染まりやすいということで、これを回避するための習俗です。

「耳塞ぎ」とは、餅などで耳を塞ぎ、死の知らせを聞かないようにすることです。ミミフタギなどとも呼ばれ、その餅は後で変わるにながしたりしました。鍋などで耳を塞ぐこともあります。また、ただ単に一度手で耳を塞いでから、その後で死の知らせをきくというところもあります。同年齢者はできるだけ会葬しないで、どうしても会葬するときは耳に餅を挟んで行くところもあります。

「年違え」は豆を食べて年を取り越し、死者とは同年齢でなくしてしまう習俗です。

〇イヌハジキ、イガキ、イキツキダケ

墓地に青竹を囲って覆ったり、垣根を作ったりすることがあります。犬が墓地を荒らさないように作るものだと「イヌハジキ(犬弾き)」と言ったり、忌みが外にでないようにするためと「イガキ(忌垣)」と言ったり、さまざまな表現があります。「モガリ」と称することもあります。

土葬した墓があらされないようにという意図もあったでしょうが、四十九日の間は死霊は荒らぶるもので、これを封鎖しておくという意味もあったと思われます。

また、墓の周囲に49本の卒塔婆をめぐらし、中に霊屋を置くのを「四十九院」と言います。都率天の宝殿を模したもので、真言宗の都率天往生信仰と殯の習俗が結合したものと思われます。

古代の殯は遺体を小屋に安置して白骨化を持つ、いわば風葬でしたが、土葬になってその名残りが埋葬地にこうしたものを作らせたと思われます。火葬が普及するにつれ、こうした習俗は減少しています。

また、埋葬地に石を置き、その後ろに竹を突き刺すこともあります。これは死者が生き返ったときに息をつくためだとして「イキツキダケ」とよばれます。

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海外の葬儀事情

日本国内においても、沖縄から北海道まで葬儀の風習はさまざまです。同じ宗教であっても、地域により葬儀の仕方は必ずしも一様ではありませんし、死者に対する扱い方も異なります。私たちが諸外国の葬儀を考えるとき、相手を理解する立場で接する必要があります。日本の葬儀習慣を強制することは国際摩擦を引き起こす原因にもなりかねません。

 

〇葬儀業を囲む環境変化

東アジアでは儒教の影響が強く、手厚い葬儀が行われますが、その1つ韓国では1969年に冠婚葬祭などの儀礼の簡素化を規定した法律が施行されました。その結果、葬儀社が出現し、葬祭業者の組織化も進みました。中国においては、国が殯葬改革を進め、葬儀の近代化、火葬の推進に精力的に取り組んでいます。欧州では、欧州共同体の動きに合わせるかのようにして、葬祭業者が国境を越えて活動するようになっています。

全世界を見渡せば、まだまだ地域共同体による葬儀が多く、葬祭業者の確立を見ないアフリカ、アジア地域や、公営が多い東ヨーロッパ諸国などもあります。しかし、近代化にともなって葬祭業者の確立が図られると共に、各地で業界団体の組織化が進行しており、公的な資格制度を採用する国もふえつつあります。それまで社会的地位が高くなかった葬祭業者の地位向上に向けての努力が盛んに行われており、IFTA(イフタ、International Federation of Thanatologists Association 国際葬儀連盟)など国際的な葬儀業者の協議団体も組織され、国境を越えた取り組みもいっそう活発になると予想されます。

 

こうした中で、欧米の業者を中心に葬祭業の業務範囲の拡大と質の変化が課題となっています。葬儀の準備とその施行という狭い範囲の業務にとどまるのではなく、埋葬や火葬に必要な書類や死亡した病院での手続き、保険金の請求業務の助言や代行、遺体の長距離・国際間移送、エンバーミングなどの遺体処置、生前予約、遺族のカウンセリング、火葬業務、墓地経営など、死によって引き起こされる一切の業務について遺族の相談にのり、必要な手続きを代行するという、総合的な業務をするよう変化しつつあります。

また、こうした業務範囲の拡大にともなって、近代企業への脱皮がなされ、経営学の知識、コンピュータ利用法といった近代経営に必要な知識や技術はもちろん、葬儀の歴史や倫理、心理学、病理学・細菌学・解剖学などの医学、葬儀に関連する法規など、業務に関連する専門的知識、技術の習得が求められるようになり、そのための教育機関も現れています。また、葬祭業の社会的な役割が強まることによって必然的に強化されるのが社会的な責任です。企業として納税義務があることなどはもちろん、消費者保護や災害時における救援活動などは葬祭業者が自覚的に取り組むべき課題となっています。

 

〇イスラム文化圏の葬儀

近年、中近東から来日する就労者や就学者も増えており、イスラム教徒の葬儀習慣を知らないために、遺体を火葬に付して問題になったこともありました。国や民族により違いはありますが、イスラム教国の諸国においては宗教が生活の中に深く根ざしており、死に対してもイスラム教の教えが強く影響しています。

イスラム教では、死はアラー(神)に定められたものであり、死者はやがて来る裁きの日に復活するまで待機のときを過ごす。周囲の人々はこれを落ち着いて受け止め、過度に嘆き悲しむことなく速やかに死者を見送る必要がある、としています。したがって、当日もしくは翌日には埋葬され、火葬は固く禁止されています。復活の日に「五体満足」である、また、火で体を焼くのは煉獄に落ちた者への罰である、と説明されています。

まず遺体は、ムスリム(イスラム教徒)の仲間によって水で清められ、白布に包まれ、棺または台に載せられ、男性だけによる葬列を組んで墓地へ行きます。都市部では、郊外の墓地まで遠いため、霊柩車も使用されます。途中にモスク(イスラム教の礼拝所)があると立ち寄って拝礼し、葬列に出合った人は起立して見送ります。墓穴には白布のまま埋葬されることが多いようです。墓標を高く建てることは少なく、埋葬跡には石を置く程度です。服喪は基本的には3日間で、この間に弔問を受けます。弔問の主たる目的は死者の身内を慰めることにあります。死者や墓は粗末にはしませんが、過度に賛美したり、大げさに弔うことはしてはいけないとされます。エジプトなどの都市部では葬祭業者の存在も認められますが、信仰を同じくする仲間により葬ることが原則となっています。

 

〇北米の葬儀事情

北米では、葬儀社に就職するにしても経営するにしても、見習いは別として、資格が必要です。資格には連邦政府資格と州政府資格があり、州によりその必要な資格が定められています。

資格はフューネラルディレクターとエンバーマーの2つに分かれており、フューネラルディレクターは、通常はエンバーマーの資格も併せて保有しているケースが多いようです。 エンバーマーはエンバーミング(遺体衛生保全、遺体に対する消毒・防腐・修復・化粧の処置の総称)の技術者、フューネラルディレクターは葬儀全般の担当者で、消費者との対応は全てフューネラルディレクターの業務です。

この2つの資格を得るためには、原則として1年以上の葬儀専門学校(または大学の葬儀学部)での履修の後、1年以上の実習を経て試験を受け、合格しなければなりません。また、資格の更新も必要で、1回合格したら永久に有資格者となれるわけではありません。 エンバーマーになるためには、化学、細菌学、解剖学、病理学を学び、薬品や遺体処置に必要な医学的知識および処置の技術を習得します。フューネラルディレクターになるためには、医学関係の知識などに加えて経営実務、社会学を学ぶと共に、葬儀の歴史などの専門的知識および遺族に対応するために必要なカウンセリングや心理学についても学びます。北米の葬儀はまずエンバーミングから始まります。病院などで亡くなった遺体は日本の斎場にあたるフューネラルホームに運ばれます。遺族の9割以上がエンバーミングを望む米国では、遺族の依頼、同意の下でエンバーミングが行われます。この間、フューネラルディレクターは遺族に棺など必要な葬具を提示し、実際に見せ、葬儀をどう行うかを相談し、費用を見積もります。どんな音楽をしようするか、どのような花を使うかなども細かく相談しますが、このとき、フューネラルディレクターは遺族に対して情報は公開するものの、どのサービス、どの物品を選択すべきかを勧めてはいけない、と法律で定められています。(消費者の選択権確保)

葬儀の実質的な中心は、日本の告別式にあたるビューイング(またはビジテーション)です。エンバーミングが済み、棺(キャスケット)に横たわった遺体と告別に訪れた人々が一人一人一定の時間内でお別れをします。宗教的な儀礼は、フューネラルホーム内のチャペルでの葬儀式、墓地での埋葬式が一般的です。フューネラルディレクターは、埋葬あるいは火葬までの葬儀の運営、手続きの代行を行うほか、葬儀後の遺族を訪問し、その悲嘆のケアも担当します。

米国ではサナトロジー、デス・スタディと言われる死や遺族の非嘆を扱う学問も発達しており、この学問成果を活かすことにも熱心です。また災害時は、フューネラルディレクターやエンバーマーが、警察、消防、医師などと共に、緊急派遣の一員に組み込まれており、死者の遺体処理、搬送を担当するなど、その社会的責任は重いものがあります。葬祭業者は専門家として社会的な地位を高めていると共に、消費者運動が活発で、消費者の強い監視の下にあるということも米国の葬祭業を囲む環境の特徴となっています。

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相続税

死亡してその財産を相続しても、相続税が全ての人にかかるわけではありません。相続税を納付すべき財産を遺した人は、全死亡者の5%程度と言われています。

「相続財産=課税される遺産総額」ではありません。課税される遺産を計算するには次の手順で行います。

1.被相続人の遺産の総額を計算します。

被相続人(死亡者)の遺産の総額を計算し、相続人に相続開始(=死亡時)前3年以内に被相続人より贈与された財産があればこれも遺産総額に加算します。土地、家屋、事業用財産、有価証券、現金・預貯金、家庭用財産など金銭に見積りできる経済的価値のあるもので、借地権、著作権、貸付金も含まれます。

この他、本来の相続財産以外の死亡保険金、各種保険金、死亡退職金もみなし相続財産として加えて計算します。

2.遺産の総額から非課税財産と債務、葬式費用を控除します。

非課税財産とは、

①墓地、墓石、仏壇、神棚、祭具

②公益法人(日赤など)に申告期間内に寄付する金額、財産

③生命保険金のうち500万円×法定相続人数分(放棄した人の数も含む)

④死亡退職金のうち500万円×法定相続人数分(放棄した人の数も含む)

のことです。

債務とは被相続人の借入金、未納の税金などを指します。

葬式費用とは、被相続人の葬儀にかかった費用で、葬儀社への費用、寺院関係費用、接待費用、その他(火葬、霊柩車の費用など)です。香典返しの費用、法要に要する費用などは葬式費用として認められていません。

これらを控除後の財産が課税価格となります。

3.課税価格から基礎控除をします。

基礎控除額は「5000万円+1000万円×法定相続人数(放棄した人の数も含む)」で計算されます。

例えば、法定相続人が3人の場合は、

基礎控除額=5000万円+1000万円×3=8000万円

となります。

基礎控除の結果、プラスがでればそれが「課税される遺産総額」になります。基礎控除額を差し引いて財産がマイナスになれば税金はかかりませんし、相続税の申告の必要もありません。

 

法定相続人の計算の場合、養子のうち特別養子や配偶者の実子で被相続人の養子になった場合は実子と同じ扱いですが、その他の養子の場合は、実子がいるときは1名だけ、実子がいない場合には2名までのみを法定相続人数に含める制限があります。

 

〇相続税の計算

「課税される遺産総額」が計算され、相続税の申告が必要なときは、次の手順で相続税額を求めます。

1.「相続税額の総額」を計算します。

法定相続人が各法定相続分どおりに相続したものと仮定して計算した金額に、それぞれの相続税額をかけて算出したものの合計金額です。相続税率は課税価格に応じて率が定められています。

2.「各相続人の負担する税額」の計算をします。

法定相続人がそれぞれ法定相続分を相続するとは限りません。放棄したり、割合が遺言、協議により変わる場合がありますので、実際の相続の割合に応じて、各相続人の負担税額を計算します。

法定相続人が配偶者と子供2名の場合、「相続税額の総額」は配偶者が2分の1、子供が各4分の1相続したものとして計算した合計額ですが、仮に子供が各8分の1を相続した場合、実際には配偶者は税額の4分の3を負担し、子供は税額の8分の1ずつを負担するよう計算します。

3.「各相続人が実際に納付する税額」を計算します。

実際に納付する税額は、個々の相続人の事情により異なります。

①配偶者の場合、相続財産が法定相続分相当額か、あるいはそれ以上でも16000万円までなら相続税はかかりません。但し、相続人の将来の相続(二次相続のこと。10年以内に同じ財産に対して相続が発生する場合)ではこの軽減が受けられないので注意が必要です。この軽減措置を利用する場合には無効であっても申告が必要です。

②死亡前3年以内に贈与された財産が相続税の課税価格に加算された人は、すでに生前贈与分に課税された贈与税の納付済税額が控除されます。また3年以内の生前贈与があっても相続放棄した相続人は生前贈与分の加算は必要ありません。

③被相続人が、今回の相続開始前10年以内に発生した相続により相続税を納付している場合には、今回の相続で財産を取得した人は、前回の相続税額の一定割合が今回の相続税から控除されます。これを「相次相続控除」と言います。

④この他、相続人が未成年者の場合や障害者の場合には控除があります。

⑤相続や遺贈により財産を取得した者が被相続人の1親等の血族および配偶者以外のとき、つまり兄弟姉妹、甥姪などの場合、あるいは法定相続人以外の場合には、計算された相続税額に2割加算した額が納付する税額になります。

〇相続税の申告と納付

相続税の納付義務者は、相続の開始を知った日から10か月以内に、被相続人の死亡時の住所地の所轄税務署に相続税の申告書を提出し、相続税を納付しなければなりません。金銭での納付が原則ですが、困難な場合は一定の条件の下で物納や延納も認められます。

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遺言

「遺言」は通常「ゆいごん」と読みますが、法律的には「いごん」と言います。自らの財産などを自らの死後どうするかについて、生前定めておくことを言います。

遺言と似たものに「遺書」がありますが、法律的には効力をもちません。これに対し遺言は、有効となる内容と形式が全て法律で定められているものです。

遺言として法的に有効なのは、主として財産に関する事項ですが、その他、相続人を廃除したり、子の認知をしたり、未成年者である子の後見人、後見監督人を定めたり、遺言の執行者を定めたり、祭祀承継者を指定したりすることもできます。「葬儀はこのようにしてほしい」などと遺言に書いても法律的には無効ですが、遺言自体が無効になるわけではありません。

遺言できる人は満15歳以上で(民法第961条)、また、夫婦など複数の者が同一内容の遺言を同一証書ですることはできません。(民法第975条、共同遺言の禁止)。

 

〇遺言の方式

遺言の方式には「普通方式」と「特別方式」があります。

「普通方式」には、自筆証書、公正証書、秘密証書の3種類があります。(民法第967条)。

「特別方式」は、普通方式の遺言がかなわない特別な状況でなされる遺言で、死亡危急者の遺言、伝染病隔離者の遺言、在船者の遺言、船舶遭難者の遺言、の4種類があります。(第976~979条)これら以外の方式によるものは遺言として認められません。

 

〇普通方式の遺言

❶自筆証書遺言

遺言者が遺言書の全文、日付、氏名を全て自書し、印鑑を押したもので、追加、削除、変更の方式も定められています。(民法第968条)特別な費用もかからず、最も簡単な方式ですが、法律の専門家でない場合には不備や不完全である心配もあります。実際、遺言の効力や本人の直筆かどうかは裁判で争われることもあり、確実性の点で問題があります。自筆が条件ですから、ワープロで書かれたものや、コピーは無効とされます。

自筆証書遺言は、死後に家庭裁判所による検認を受ける必要があります。また、封印のある場合は家庭裁判所で開封する必要があります。(民法第1004条)。

❷公正証書遺言

最も安全、確実な遺言の方式です。公証人が遺言者の口述に基づき公正証書として作成するものです。証人2人以上の立ち会いが必要です。(民法第969条)。

公証人に支払う手数料が必要ですが、専門家が作成するので無効のおそれがなく、原本が公証人役場に保管され、家庭裁判所による検認の必要もありません。

❸秘密証書遺言

公正証書遺言は公証人、証人の前で遺言内容を明らかにするものですが、秘密証書は、遺言内容は秘密にしたまま、その封印したものを公証人、2人以上の証人の前に提出し、自己の遺言書であることを証明してもらうものです。(民法第970条)

遺言証書の全文を自書する必要はなく、ワープロでもかまいません。但し、署名し、印鑑を押し、同じ印鑑で封印します。文章の追加、変更、削除は、定められた方式によります。死後、家庭裁判所で開封、検認を受ける必要があります。

 

以下のものは、あくまで遺言者が普通方式の遺言が不可能な、特別な状況にあるときだけに認められる遺言の方法で、遺言者が普通方式の遺言が可能になり6ヶ月生存したときには無効となります(民法第983条)。

 

〇特別方式の遺言

①死亡危急者の遺言

病気などにより死亡間近に迫った者が遺言しようとするとき、証人3人以上の前で口述し、証人の一人が筆記して各証人が承認して著名し印鑑を押したものです。遺言の日から20日以内に家庭裁判所に提出し、家庭裁判所が遺言者本人の真意であると確認しないと効力をもちません(民法第976条)。

②伝染病隔離者の遺言

伝染病のため隔離されて交通が絶たれ、人の行き来のできない場所にいるとき、警察官一人、証人1人以上の立ち会いで遺言書を作成することができます(民法第977条)。

※伝染病以外の理由で行政処分が行われた場合(例えば刑務所内にある者)も同様であると解されています。

③在船者の遺言

船舶中にある者は、船長または事務員1人、証人2人以上の立ち会いで遺言書を作成できます(民法第978条)。

④船舶遭難者の遺言

船舶遭難の場合、船舶中で死亡の危険が迫った者は証人2人以上の立ち会いのもと口頭で遺言できます。但し、証人はこれを筆記、署名、印鑑を押し、家庭裁判所の確認を得ないと効力をもちません(民法第979条)

 

〇遺言の効力と取り消し

遺言の効力と取り消しについて、主なものを記します。

1.遺言は、遺言者が死亡した時点から効力を発揮します(民法第985条)。

2.受遺者(遺産を贈られる人)は、遺贈(死後贈られる財産)を放棄することができますが、催告期間内に承認、放棄の意思表示をしないときは承認したとみなされます。また、いったん承認または放棄したものを取り消すことはできません(民法第986~989条)。

3.遺言者は、いつでも、遺言によって、前の遺言の全部または一部を取り消すことができます(民法第1022条)。

4.前の遺言と内容が重なったり、矛盾するなど抵触する遺言があったときは、後の遺言によって前の遺言が取り消されたものとみなされます(民法第1023条)。また、遺言書を自分の意思で破棄したり、遺贈の目的物を破棄、処分したときも、その部分の遺言を取り消したとみなされます(民法第1024条)

 

〇遺留分

例えば、遺言書に配偶者はあるが、子供も親も兄弟もいないとき、法定の相続人は配偶者1人です。この遺言者に愛人がいて、財産を全て愛人に遺贈すると遺言書に書いたとします。この場合、配偶者が異議を唱えなければ、愛人に財産が全て遺贈されますが、配偶者が異議を唱えれば、財産の半分が相続できます。このように一定の相続人が一定の割合で必ず相続できるように定められたものを「遺留分」と言います。

遺留分は、相続人が親(=直系尊属)だけの場合は3分の1、配偶者や子供の場合は2分の1です。兄弟姉妹には遺留分がありません(民法第1028条)。

相続人が配偶者1人だけのとき、遺言がなければ配偶者が100%相続しますが、前の例の場合は、その2分の1しか請求できません。この遺留分を請求することを「遺贈、贈与の減殺の請求」と言い、相続の開始(死亡時)あるいは減殺すべき贈与または遺贈の事実を知ったときから1年以内に行わない場合、または相続の開始から10年経過すると時効になり、権利は消滅します(民法第1042条)。

つまり遺言者は、相続人が兄弟だけの場合には遺言で全財産を自由に遺贈することを決定でき、相続人が親だけの場合には財産の3分の2について自由に決定でき、相続人が配偶者と子供のときは財産の2分の1について自由に決定できます。

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相続人

「相続」とは、ある人が死亡したとき、その人に属していた財産上の権利義務を受け継ぐことです。

死亡した人を「被相続人」、財産を受け継ぐ人を「相続人」と言います。被相続人の借金などの債務も相続財産になりますから、相続したくないときは相続放棄や限定承認の手続きをとる必要があります。

 

〇相続人

相続人の資格のある者は、まず配偶者、子ども(胎児を含み、子どもが相続開始以前に死亡しているときは孫)です。こどもがいないときは親(直系尊属)で、その親もいないときは兄弟姉妹(兄弟姉妹が相続開始以前に死亡しているときはその子である甥、姪)となります。配偶者は別格で、次に子供、親、兄弟姉妹の順になります。(民法第886~890条)

配偶者が別格とは、配偶者がいるときはどんな場合でも相続人の資格があるということです。順位は、子がいるときは子が相続人で、その他の人には相続人の資格がなく、子がいないときには親が、子も親もいないときは兄弟姉妹が相続人の資格を得るという意味です。

〇法定相続分

相続人が受け取る財産の割り当てを「相続分」と言います。各相続人の相続分について遺言による指定がない場合は、法律で相続分を定めており、これを「法定相続分」と言います。

相続人が1人のときは、その1人が全財産を相続します。複数のときは相続人の順位に従って次のようになります(民法第900条)。

1.相続人が配偶者と子どものとき

相続分は、配偶者が2分の1、子どもが2分の1です。

2.相続人が配偶者と親のとき

被相続人にこどもがいない場合、相続分は、配偶者が3分の2、親が3分の1です。

3.相続人が配偶者と兄弟姉妹のとき

被相続人に子どもも親もいない場合、相続分は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。

4.同じ順位が複数人のときは均等分割します。

つまり、配偶者と子ども4人のときは、配偶者が2分の1、各子どもは2分の1の4分の1、つまりこどもは全財産の8分の1ずつを相続します。

〇遺言と遺留分

被相続人は、遺言で相続分を決めたり、他人に遺贈することを定めることができますが、遺留分に関する規定を超えて遺贈、贈与(死亡1年前まで)した場合には、相続人の減殺請求により制限をうけることがあります。(民法第902条)。

〇遺産分割協議

遺言がなく、相続人が複数いる(共同相続人と言う)場合は遺産の分割について協議し、協議が整わない場合には家庭裁判所に分割を請求することができます(民法第907条)。協議によって法定相続分を放棄しようと、相続分割をどう決めようと自由です。

遺産分割協議は相続人全員が参加して合意する必要があります。全員が参加しなかったり、協議が不調に終わったときは、相続人が共同して、または1人で家庭裁判所に申し立てて調停分割され、調停が不調のときは審判分割されます。

協議にあたっては、特別受益の問題と寄与分の問題を検討する必要があります。

❶特別受益者

特別受益者とは、相続人の中に被相続人から遺贈があるか、または、被相続人より結婚、養子縁組のための支度金などとして、あるいは生計の資本として生前に贈与を受けた者のことです。特別受益者がいる場合、相続財産にその遺贈、贈与の額を加えた金額全体を相続財産とみなし、ここから各相続人の相続分を計算します。そして、この特別受益者の計算上の相続分から遺贈、贈与の額を差し引いて、残額があればそれを特別受益者の相続分とします。特別受益者は、遺贈または贈与の金額が計算上の相続分の金額に等しいか超過するときは相続分を受け取れません。(民法第903条)

❷寄与分

寄与分とは、特別受益者とは逆に、相続人の中に被相続人の財産形式に功があったり、病気介護などして財産の維持に特別の寄与した者(特別寄与者と言う)がある場合の、寄与の割合のことです。寄与分がある場合、相続開始時の財産から寄与分を除いた金額を相続財産とみなして相続分を算定します。したがって、特別寄与者の相続分は、寄与分を除いて計算した相続分に寄与分を加算した金額になります。協議がうまくいかなかったときは、特別寄与者の請求により家庭裁判所が寄与分を決めます。(民法第904条の2)

〇相続の承認、放棄

相続財産に多額の債務があって債務超過のとき、それを相続すると借金のみを背負い込

むことになります。こうした相続人を困難から保護するため、相続するか否かの選択がで

きるようになっています。限定承認と相続放棄がそれです。

「限定承認」とは、相続によって得た財産の限度で債務等を弁済し、それを超えてまでは

弁済しないことを条件とした相続です。限定相続をする場合は、相続人全員が共同で、相

続の開始を知った時から3ヵ月以内に家庭裁判所に財産目録を提出し、限定承認を申し立

てる必要があります。

相続人のうち1人でも限定承認に反対する人がいた場合、限定承認は成立しません。こ

のときは、単純承認か相続放棄のどちらかを選択することになります。

相続人は、相続の開始を知った時から3ヵ月以内に相続の承認(「単純」と「限定」が

あります)か放棄かを決め、限定承認や相続放棄の場合は、そのための手続きをする必要

があります。

もし手続きをしないと被相続人(死者)に属した一切の財産上の権利義務を無条件で承

継した、つまり「単純承認」したとみなされます。また、手続きをする以前に相続財産の

一部または全部を換金したり、消費したりして処分したとき、あるいは財産の一部を隠し

たりしたときにも単純承認したとみなされます。(民法第920~921条)。

 

〇相続人がいないとき

本人が死亡し、相続は開始されたが、相続人がいないとき、あるいは法定相続人が明らかでないときは、「相続人不存在」ということで、相続財産は法定(相続財産法人)とされ、財産管理人を置き、相続財産の権利義務を精算します(民法第951~957条)。

手続きを経て相続人がいないことが確定したとき(民法第958条の1,2)には、残った財産は「特別縁故者」がいる場合には、その請求に基づいて分与され、それでも残った財産があれば国庫に帰属します。(民法第958条の2、959条)。「特別縁故者」とは、本人と生計を同じくしていた(内縁の妻など)、療養看護に努めて特別縁故があった者のことです。

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死後の手続き

死亡直後には、医師などに死亡診断書または死体検案書の交付を受け、死亡地、死亡者本人の本籍地、届出人の現在地のいずれかの自治体に死亡届を提出し、火葬・埋葬許可証の交付をうけます。火葬場で火葬済の証印を受け、墓地または納骨堂に遺骨を安置するときには許可証を提出します。

〇市区町村役場での手続き

1. 国民健康保険加入者⇒葬祭費の申請

2. 老人保健医療受給者⇒老人保険医療受給者証の返還

3. 医療費助成受給者⇒医療助成需給証、医療証の返還

4. 国民年金加入者または受給者⇒死亡一時金、遺族基礎年金、未受給年金などの請求手続き

5. 被爆者援護資格認定書所持者⇒認定書返還などの手続き

6. 公営住宅入居者⇒世帯員変更などの手続き

7. 身体障害者手帳または療育手帳の所持者⇒手帳の返還などの手続き

8. 児童手当、特別給付、児童扶養手当、特別児童扶養手当の受給者⇒受給者の変更または喪失などの届け出

9. 世帯主⇒世帯主変更届

10. 印鑑登録者⇒印鑑登録の返還

〇会社勤務の場合

1. 返還するもの:会社の資料、社員証、バッジ、鍵、健康保険証など

2. 提出するもの:死亡届など必要書類

3. 確認して必要な措置をとるもの:死亡退職金、最終給与、財形・社内預金、団体生命保険、企業年金、健康保険の葬祭費・埋葬料、労災保険、その他

○故人名義の財産の名義変更

1.土地・建物等の不動産⇒司法書士に依頼

2.有価証券(株券、債券など)⇒証券会社に依頼

3.自動車⇒陸運局にて手続き

4.その他(電気、ガス、水道、電話、借地、借家)⇒各相手先

○国民健康保険葬祭費

死亡者が国民健康保険に加入していれば、葬祭費の支給を受けることができます。申請時に持参するものは、保険証、印鑑、喪主の銀行口座で、喪主またはそれに準ずる者が申請しますが、申告しなければ受給できず、期限は死亡後2年以内です。

○健康保険埋葬料

死亡者が健康保険の加入者であれば「被保険者埋葬料」が、死亡者が健康保険の加入者の扶養家族であれば「家族埋葬料」が支給されます。

1.加入者本人が死亡した場合には、「被保険者資格喪失届」を提出しなければなりません。

2.扶養家族が死亡した場合には「被扶養者(異動)届」を提出しなければなりません。

3.加入者本人が死亡した場合には、請求者と本人の関係を示す書類を添付します。請求者が内縁関係ならば生計維持を証明できる書類が必要です。

4.加入者本人が死亡した場合の埋葬料の支給額は標準報酬月額の1ヶ月分(最低保障10万円)、被扶養者の場合は一律10万円となっています。

5.加入者本人が死亡し、その扶養家族がいない場合には「埋葬費」の請求となります。その場合には、埋葬に要した費用の領収書(品名、数量、単価および金額が明記してあること)の添付が必要で、故人の標準報酬月額(最低10万)の範囲内で実費が支給されます。

6.事業主の証明を得られない場合または事業主本人が死亡した場合には、火・埋葬許可証、死亡診断書(死体検案書)の写しを添付します。

7.手続きは事業所(勤務先)を管轄する社会保険事務所で行いますが、所属の健康組合に代行してもらうことができます。

8.死亡後2年以内に申告しなければ時効となり、受給できません。

9.死亡原因が業務上や通勤途上の場合はこれを受けられず、労災保険よりの受給(次項参照)となります。

○労災保険葬祭給付

死亡原因が業務上や通勤途中の場合は健康保険からの死亡給付(埋葬料)は受けられません。労災保険より給付します。

業務災害の場合には「葬祭料」の請求書を、通勤災害の場合には「葬祭給付」請求書を所轄の労働基準監督署へ提出します。

1.葬祭料および葬祭給付の保険給付額は給付基礎日額の30日分+28万円または60日分(給付基礎日額とは、災害発生時の直前の過去3ヵ月の総賃金を総日数で割ったもの)です。

2.請求書には死亡診断書または死体検案書を添付します。

3.業務災害または通勤災害で死亡した場合には、遺族は年金または一時金の請求を行うことができます。

①年金

業務災害⇒遺族補償年金支給請求書

通勤災害⇒遺族年金支給請求書

*年間、給付基礎日額の153~245日分が支給されます。

②一時金

業務災害⇒遺族補償一時金支給請求書

通勤災害⇒遺族一時金支給請求書

*給付基礎日額の1000日が支給されます。

4.労災の遺族への年金、一時金の請求書には、以下のものを提出します。

①死亡診断書または死体検案書の写し

②戸籍謄本(または抄本)

③生計維持を証明する書類など

5.葬祭料、葬祭給付の時効は2年、遺族への年金、一時金の時効は5年となっています。

 

【公的年金の概要】

・.公的年金の種類

公的年金とは、全ての国民が加入している「国民年金」、一般サラリーマンを対象とする「厚生年金」、公務員等が加入している「共済年金」のことです。

1.国民年金

「国民年金」を支払うのは20歳から60歳まで、月額13,300円(平成15年2月段階)。65歳以降に受給する老齢基礎年金は、年額804,200円(40年加入している場合)です。

2.厚生年金

「厚生年金」は、国民年金保険料を含めて、会社と本人が半々で標準報酬月額の17.35%(本人負担半分)を負担するものです。扶養されている妻(20歳以上)は届け出ることにより国民年金の保険料を納める必要がありません。老齢基礎年金に加えて老齢基礎年金が受給できます。

3.共済年金

「共済年金」の受給条件は厚生年金とほぼ同じで、老齢厚生年金に相当するのが退職共済年金です。これに加えて、厚生年金基金に相当する職域年金が加算されます。

・国民年金の号

国民年金の「第1号被保険者」とは自営業者等、「第2号被保険者」とはサラリーマン、OLや公務員で厚生年金や共済年金に加入している人、「第3号被保険者」とは民間サラリーマンや公務員に扶養されている妻、を原則として言います。

 

【遺族給付の概要】

・遺族給付の種類

遺族給付には、国民年金部分の遺族基礎年金(あるいは寡婦年金、死亡一時金)と遺族厚生年金(あるいは遺族共済年金)とがあります。

1.①遺族基礎年金、②寡婦年金、③死亡一時金

故人によって生計をたてていたとき、遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金のいずれかを受給できます。

🔴遺族基礎年金が受給できないとき⇒寡婦年金か死亡一時金

🔴寡婦年金が受給できないとき⇒死亡一時金

①遺族基礎年金

[受給資格]

遺族基礎年金を受給できるのは子のいる妻(内縁を含む)か子であり、子とは18歳の誕生日の属する年度末(3月31日)を経過していない子である場合です。

[受給額]

年額804,200円(平成14年度)に子の加算額(2人目まで1人231,400円、3人目からは1人77,100円)がプラスされます。遺族が子だけのときは、1人なら804,200円、2人目は231,400の加算、3人目からは1人77,100円の加算で、これを子の数で割った額が1人分となります。

[支給要件]

被保険者または老齢基礎年金の資格期間を満たした者が死亡したとき。但し、死亡した者について保険料納付済期間(免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上あること。

②寡婦年金

[受給資格]

第一号被保険者(自営業者等)である夫が死亡し、保険料納付期間(免除期間を含む)の合計が25年以上あり、夫が死亡した時に10年以上の婚姻関係のある妻に支給されます。支給期間は妻が60歳になり、妻自身の老齢基礎年金が支給される65歳までの5年間です。

[受給額]

夫の受給できる老齢基礎年金の4分の3の金額

③死亡一時金

[受給資格]

第1号被保険者(自営業者等)が死亡した時点で3年以上保険料を納めており、それまで老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取っていないときに支給されます。  死亡一時金を受け取れるのは、

①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹

のうち順位が先の者、かつ、生計を共にしていた者です。

[受給額]

保険料納付済期間により異なります。

最低で12万円、最高で32万円となります。

2.遺族厚生年金

[受給資格]

厚生年金の被保険者や年金受給者が死亡したとき、遺族に支給されます。但し、死亡した人に生計を維持されていたことが条件で、順位は、①配偶者・子、②父母、 ③孫、④祖父母、となります。また、配偶者が夫の場合、また父母の場合や祖父母の場合は55歳以上であることが条件で、60歳から支給されます。子や孫の場合は18歳の誕生日後の年度末までの支給となります。遺族基礎年金を受給できる資格のある遺族は加算して受給できます。

[受給額]

平均標準報酬月額×1000分の7.125×被保険者期間の月数×4分の3×物価スライド率で計算されます。

[条件]

①厚生年金の被保険者が死亡したとき

②厚生年金の被保険期間中の傷病が原因で退職後に初診日より5年以内に死亡したとき

③1~2級の障害年金を受けている人が死亡したとき(旧制度の障害年金受給者を含む)

④老齢厚生年金の受給者や受給資格者が死亡したとき(旧制度の老齢年金・通算老齢年金受給者を含む)

 

・厚生年金の寡婦加算

厚生年金の被保険者期間が20年以上(40歳以後の加入期間が15年以上でもよい)ある老齢厚生年金受給権者、1~2級の障害厚生年金受給権者、在職中の夫が死亡したとき、子(18歳未満)のない35歳以上の妻は、40歳から65歳になるまで年額603,200円の中高齢加算が遺族厚生年金にプラスして支給されます。65歳以後は妻の生年月日により減額された経過的寡婦加算となります。(但し、遺族基礎年金を受給中は支給停止)

・遺族厚生年金と老齢厚生年金の併給の選択

妻の厚生年金被保険者期間により、次の3つの選択肢があります。

①専業主婦期間が長い場合 ⇒ 遺族厚生年金+妻の老齢基礎年金

②高収入の女性の場合 ⇒ 妻の老齢厚生年金+妻の老齢基礎年金

③一般的な共働きの女性の場合 ⇒ 夫の遺族厚生年金の3分の2+妻の老齢厚生年金の2分の1+妻の老齢基礎年金

 

・遺族共済年金

公務員などが加盟している共済組合の組合員や退職共済年金の受給者が亡くなった場合には、遺族厚生年金と同様に遺族共済年金が支給されます。18歳未満の子のない妻が受けることができる中高齢加算も同様にあります。支給額は、標準報酬月額に比例した本人の年金額の4分の3が原則となっています。

 

・遺族給付と生計維持条件

遺族基礎年金、遺族厚生年金などの遺族給付は「死亡当時、その人により生計が維持されていたこと」が条件です。

・未支給年金の請求年金

受給者が死亡したとき、未受給の年金が残っていることがあります。死亡後できるだけ早く、未支給年金・保険給付請求書および死亡届を提出します。このとき、年金証書、死亡診断書(死体検案書)、戸籍謄本、住民票、生計維持証明書を添付します。請求者の順位は、①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹、となります。

 

〇銀行預金に関する手続き

通常の払戻伝票に記入して手続きを行います。必要書類は以下の通りです。

1.除籍謄本 除籍謄本で相続人が特定できない場合には原戸籍など

2.印鑑証明 相続人全員のもの

3.相続の証明書類

🔴単純相続用(法定相続分による相続)*最も一般的な相続です。

  • 分割相続用(遺産分割協議による相続)*遺産分割協議書が必要です。
  • 遺言相続用(遺言書による相続)*遺言書が必要です。

【注】債券用別途

4.通帳、証券など被相続人に関するもの

5.実印 相続人代表者のもの

〇郵便局での手続き

貯金、保険の解約は窓口に問い合わせます。

1.相続人を証明する書類

死亡者、相続人全員の記載がある謄本(抄本)

2.同意書

相続する権利のある人全員が代表者に委任する同意書

3.手続きする人(=代表者)の証明書

運転免許証、保険証など

〇死亡保険金の請求に必要な書類

保険会社に問い合わせますが、必要書類には次のものがあります。

1.保険証券(または紛失届)

2.死亡診断書(または死体検案書)

3.被保険者の戸籍謄本(抄本)または住民票

4.請求者の印鑑証明書(相続人全員分)

※指定受取人の請求で保険金300万円以下の場合等は不要です。

5.請求者の戸籍謄本(抄本)

6.保険金請求書

7.代表者選定通知書(但し、指定受取人が2人以上の場合)

8.相続人代表念書

9.受傷事情書(但し、不慮の事故で死亡した場合)

10.交通故証明書(但し、交通事故で死亡した場合)

11.契約内容変更請求書(但し、必要な場合)

12.保険証券再発行請求書(但し、必要な場合)

保険金の受け取り方法には、①利息をつけて据え置く方法、②年金で受け取る方法、③一時金で受け取る方法、の3通りがあります。

〇所得税確定申告、医療費控除申告

死亡者の1月1日から死亡日までの所得税の確定申告は、死亡日(相続の開始を知った日)の翌日から4ヶ月以内に行う必要があります。死亡者が前年の確定申告をしていないときは前年度の確定申告も4ヶ月以内に行わなくてはなりません。

また、年間の医療費が10万円以上の場合には、10万円を超える部分(200万円を限度とする)について医療費控除が適用され、確定申告から控除できます。死亡後の支払い分は相続税申告時に控除できます。

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現在、主として利用されているのは「和型」と言われる三層構造の墓石で、江戸時代に生まれた形式です。最近ではこれに「洋型」と言われる形態が加わっており、部分的ですがオリジナル・デザインの墓石もあります。昔の形態をとどめる五輪塔も一部に見られます。

墓埋法によると、遺体または遺骨を納める場所は「墳墓」と「納骨堂」の2つに分類されます。

➊墳墓

「墳墓」とは個々のお墓のことです。墓埋法に、「墳墓」とは「死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設」とあり、ここでいう「埋葬」とは「死体を土中に葬ること」つまり土葬のことを言いますから、土葬墓、火葬墓を総称して「墳墓」と規定されています。日本では現在火葬率が99.4%(2000年)ですが、土葬も法律的には認められています。

❷墓地

墳墓を設ける区域が「墓地」で、墓埋法では「墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可を受けた区域」と規定されています。(同法の第4条「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」)そのため、墳墓すなわちお墓は勝手に作ることは許されないと決められているのです。また、墓地経営は、事実上、自治体による公営化、財団法人、宗教法人のいずれかでないと認められません。

また、法律的に土葬が認められているとしても、現在では、一部の地域や信仰上の問題など特別な事情がある場合を除いて、土葬は現実的には困難になっています。

❷納骨堂

「納骨堂」とは「他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設」(墓埋法第2条第6項)です。したがって、寺院、教会といった宗教施設でも、納骨堂の許可を得ていない施設では他人の遺骨を長期的に預かることが出来ません。但し、「他人の委託をうけて」とあるので自分の家族の遺骨を自宅に保管することは違法ではないと解釈されます。

 

○埋葬、改葬

➊埋葬、納骨には許可証が必要

お墓に遺体を埋葬するとき、遺骨を埋蔵するとき、あるいは、納骨堂に遺骨を収蔵する

(=預ける)ときには、死亡届を出した自治体で交付される火葬・埋葬許可証が必要です。

特に納骨の場合には、許可証に火葬済との証印を受けたものが必要で、この許可証を墓地または納骨堂の管理者に提出します。

❷改葬にも許可証が必要

「改葬」とは、いったん納めたお墓または納骨堂から遺骨を他のお墓または納骨堂に移動させることです。この際、遺骨が納められている地の市区町村から「改葬許可証」を受け、移動先の墓地または納骨堂の管理者に提出します。

❸分骨する場合

分骨する場合には、火葬場の管理者の発行する火葬証明書または主な遺骨の収められている墓地または納骨堂の管理者の発行する埋蔵(収蔵)証明書を得て、分骨を収める墓地または納骨堂の管理者へ提出します。

 

○墓地の分類

➊村落共有墓地

村落共有墓地は古くから村落が共有して保持していた墓地を追認したもので、新しく認められることは事実上ありません。

❷寺院境内墓地

寺院境内墓地は、最初に寺院の檀信徒になるという契約があり、檀信徒であるから墓地の使用が認められるという関係にありますので、檀信徒として寺の維持その他の義務を負います。

❸公営墓地

公営墓地は、自治体の条例その他で使用条件が定められ、使用権を取得するものです。

❹民営墓地

民営墓地は、管理者と使用者が対等な契約に基づいて使用権を取得するもので、財団法人や宗教法人などの公益法人が経営する墓地です。

 

○使用権

一般にお墓を取得することを「お墓を買う」と言いますが、厳密にいえば「墓地を使用する権利を取得する」ことです。墓地の土地は墓地の経営主体の所有物件で、利用者にその使用権があり、墓石は利用者の所有物件、となっています。お墓の建立にあたっては、使用権入手費用(一般に「永代使用料」という)、墓石建設費が必要で、このほか継続的に管理料が必要です。使用権の名称が「永代」となっていても、管理料の支払いが一定期間途絶え、承継する縁故者が不在のときは、使用権が消滅し、墓石は撤去され、遺骨などは無縁塔に合祀されます。

改葬するには、一般には、利用者が自ら墓石を処分し、更地にして墓地使用権を返還し、新たな移動先の墓地使用権を取得します。(使用権入手費用は原則として返還されません。)

 

〇お墓の承継

お墓の使用権者が死亡したとき、「お墓を継ぐ」必要がありますが、これを「墓の承継」と言います。お墓は民法に規定された「祭祀財産」という性格をもっており、その継承者は、本人が指定するか、そうでない場合には「慣習により」定め、最終的には家庭裁判所が決します。

子供がいないためお墓の継承者がいないというケースもでてきています。民営墓地では無縁化を避けるため、配偶者や直系のこどもの範囲であれば申請者に承継を認め、後から問題となったら裁判所に判断を委ねる方式をとるケースが増えています。

こうした社会的変化に対応して、永代供養墓(公営の場合「合葬墓」と言う)も出てきました。契約した一定期間は承継者がいなくても墓が存続し、その期間がすぎて承継者がいなければ定められた合祀墓(集合墓)に合祀するという方式が一般的です。また、最初から合祀する形態の永代供養墓もあります。

〇埋骨方法

お墓で、遺骨を納める部分を「カロート」と称しますが、お墓への遺骨の埋葬は、カロートに骨壺単位で納める方式と骨壺から遺骨を空ける方式とがあります。

〇散骨

近年マスコミの話題をなり、関心を深めているのが「散骨」です。遺骨を墓地または納骨堂に納めるのではなく、遺骨を粉末状にして、これを海や山などに撒く方式です。

法律的には、①原型をとどめないよう粉砕する、②他人が嫌がらない場所に撒く、③その他問題が生じないこと、というのが常識的解釈です。なお、散骨にみられるのは自然回帰志向で、墓地でありながら墓石や骨壺などの人工物を一切用いないで遺骨を埋め、花木を植える「樹木葬」なども現れ、注目を浴びています。

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